研究内容: 2次元原子層物質、トポロジカル物質の量子物性
我々の研究グループでは2次元原子層物質やトポロジカル物質を対象として、その量子物性を理論的に研究しています。これらはごく最近になって発見された新しい物質群で、「相対論的粒子」や「トポロジカル表面状態」といった、伝統的な金属や半導体では見られないようなさまざまな変わったな性質を持ちます。その物理的な性質、具体的には輸送現象(電気伝導、局在効果、量子ホール効果)、光学特性、磁気的性質を量子力学的手法で解明し、新たな物性や機能を提案することを目的としています。
・2次元原子層物質
厚みが原子1個分から数個分、大体1nm程度以下の物質を「2次元物質」と呼びます。 多くの2次元物質は、3次元の層状物質の1層だけを取り出すことで得られます。 たとえばグラフェンは炭素の2次元物質ですが、グラファイト(黒鉛)の1層を剥がすことで作られます。 近年になってグラフェンのみならず、半導体、磁性体や超伝導体のさまざまな2次元物質が作成されるようになり、 一つの大きな分野を形成するようになりました。
薄くしただけで何か変わるのか?と思うかもしれませんが、多くの場合2次元物質は母体となる3次元物質と全く異なる性質を持ちます。 たとえば、グラフェンの電子構造は、図のように、価電子帯と伝導帯が点で接する構造を取ります。 これは「質量ゼロの相対論的粒子」と呼ばれるものとと数学的に等価な構造であり、 光のように決して止まることがないという変わった性質を持ちます。これは元のグラファイトにはない性質です。 他にも、3次元の塊だと光らない半導体(間接ギャップ半導体)だったものが、1層にすることで光る半導体(直接ギャップ半導体)に変わることもありますし、また超伝導体では1層にすることで超伝導転移温度が何倍にもなることもあります。2次元物質をそれ単独で調べる必要がある理由がここにあります。
2次元物質には3次元ではできない様々なことができます。 好きな形に切ることで、量子細線や量子ドットといったナノ構造をつくることができ、特別な性質を持たせることができます。 これはデバイス応用とも密接に関係するので大変重要な研究分野です。 2次元物質を2枚を重ねると、原子スケールより遥かに大きな超格子構造や、また明確な周期を持たない準結晶と呼ばれるものも実現できます。また2次元物質はすべての部分が外界と接してますので、隣り合う物質によって極めて大きな影響を受けます。組み合わせの数だけ新しい物性探索の可能性があるわけです。 2次元物質の世界を舞台として、今までの物質では実現できなかったような性質や機能を理論的に予言することが究極の目標です。
厚みが原子1個分から数個分、大体1nm程度以下の物質を「2次元物質」と呼びます。 多くの2次元物質は、3次元の層状物質の1層だけを取り出すことで得られます。 たとえばグラフェンは炭素の2次元物質ですが、グラファイト(黒鉛)の1層を剥がすことで作られます。 近年になってグラフェンのみならず、半導体、磁性体や超伝導体のさまざまな2次元物質が作成されるようになり、 一つの大きな分野を形成するようになりました。
薄くしただけで何か変わるのか?と思うかもしれませんが、多くの場合2次元物質は母体となる3次元物質と全く異なる性質を持ちます。 たとえば、グラフェンの電子構造は、図のように、価電子帯と伝導帯が点で接する構造を取ります。 これは「質量ゼロの相対論的粒子」と呼ばれるものとと数学的に等価な構造であり、 光のように決して止まることがないという変わった性質を持ちます。これは元のグラファイトにはない性質です。 他にも、3次元の塊だと光らない半導体(間接ギャップ半導体)だったものが、1層にすることで光る半導体(直接ギャップ半導体)に変わることもありますし、また超伝導体では1層にすることで超伝導転移温度が何倍にもなることもあります。2次元物質をそれ単独で調べる必要がある理由がここにあります。
2次元物質には3次元ではできない様々なことができます。 好きな形に切ることで、量子細線や量子ドットといったナノ構造をつくることができ、特別な性質を持たせることができます。 これはデバイス応用とも密接に関係するので大変重要な研究分野です。 2次元物質を2枚を重ねると、原子スケールより遥かに大きな超格子構造や、また明確な周期を持たない準結晶と呼ばれるものも実現できます。また2次元物質はすべての部分が外界と接してますので、隣り合う物質によって極めて大きな影響を受けます。組み合わせの数だけ新しい物性探索の可能性があるわけです。 2次元物質の世界を舞台として、今までの物質では実現できなかったような性質や機能を理論的に予言することが究極の目標です。
・トポロジカル物質
トポロジーという言葉は物質科学とは直接関連がないように思えますが、最近になってトポロジーがキーワードとなる物質が数多く発見されています。例えばトポロジカル物質の一つである「ワイル半金属」では、バンド構造における価電子帯と伝導帯が波数空間上の点で接し、その接点がトポロジーによって保護されています。互いに絡んだ紐があるとき紐を切らない限り絡みは解消されないように、外部的な擾乱があっても接点が強固に残り続けるのです。 バンド接点の周りのバンド構造は質量ゼロの相対論的粒子の近似されます。これはグラフェンの3次元版ということもできます。「止まらない電子」が今度は3次元空間に現れるわけです。
非自明なトポロジーを持つ3次元物質は、その表面の性質にも大きな特徴があります。 通常の3次元物質では電子の波動関数は物質の塊の中全体に分布してます。これをバルク状態と言います。 一方で、トポロジカル物質ではバルク状態とは別に「表面状態」、即ち物質の表面に確率振幅が集中した状態が現れます。 表面状態もまたトポロジーで保護されており、表面を削ったり、または別のものをくっつけたりしても簡単には除去することはできません。
近年の研究で、このような風変わりな性質をもつ電子系が、現実の物質にかなり広く存在することがわかってきました。 我々の興味は、「質量ゼロの相対論的粒子」や「トポロジカル表面状態」といった概念が、 実際の物理的現象にどのような影響を与えるのかということです。 20世紀に量子力学が作られて以来、物質でおこる電気的、光学的、磁気的、熱的現象を理論的に記述する処方箋が作られましたが、それらは旧来の金属や半導体に対して作られたものです。 残念ながら(というか喜ぶべきことに)電子構造が全く異なるトポロジカル物質には必ずしも対応していませんので、 自分で一から考える必要があります。 例えば、3次元の質量ゼロの相対論的粒子を持つ物質が金属なのか絶縁体なのか、そんなことですら非自明な問題になります。 また表面状態が電気伝導や光物性にどのような影響を与えるのかについても、多くのことはわかっていません。
トポロジーという言葉は物質科学とは直接関連がないように思えますが、最近になってトポロジーがキーワードとなる物質が数多く発見されています。例えばトポロジカル物質の一つである「ワイル半金属」では、バンド構造における価電子帯と伝導帯が波数空間上の点で接し、その接点がトポロジーによって保護されています。互いに絡んだ紐があるとき紐を切らない限り絡みは解消されないように、外部的な擾乱があっても接点が強固に残り続けるのです。 バンド接点の周りのバンド構造は質量ゼロの相対論的粒子の近似されます。これはグラフェンの3次元版ということもできます。「止まらない電子」が今度は3次元空間に現れるわけです。
非自明なトポロジーを持つ3次元物質は、その表面の性質にも大きな特徴があります。 通常の3次元物質では電子の波動関数は物質の塊の中全体に分布してます。これをバルク状態と言います。 一方で、トポロジカル物質ではバルク状態とは別に「表面状態」、即ち物質の表面に確率振幅が集中した状態が現れます。 表面状態もまたトポロジーで保護されており、表面を削ったり、または別のものをくっつけたりしても簡単には除去することはできません。
近年の研究で、このような風変わりな性質をもつ電子系が、現実の物質にかなり広く存在することがわかってきました。 我々の興味は、「質量ゼロの相対論的粒子」や「トポロジカル表面状態」といった概念が、 実際の物理的現象にどのような影響を与えるのかということです。 20世紀に量子力学が作られて以来、物質でおこる電気的、光学的、磁気的、熱的現象を理論的に記述する処方箋が作られましたが、それらは旧来の金属や半導体に対して作られたものです。 残念ながら(というか喜ぶべきことに)電子構造が全く異なるトポロジカル物質には必ずしも対応していませんので、 自分で一から考える必要があります。 例えば、3次元の質量ゼロの相対論的粒子を持つ物質が金属なのか絶縁体なのか、そんなことですら非自明な問題になります。 また表面状態が電気伝導や光物性にどのような影響を与えるのかについても、多くのことはわかっていません。